この記事をまとめると
■2025年4月1日付けで日産のCEOに就任したのがヴァン・エスピノーサ氏だ
■エスピノーサ氏はメキシコ日産の商品企画やタイ日産自動車マーケティングディレクターなどを歴任
■2026年度までに黒字化できなければ退任も覚悟するとメッセージを残している
CEOの後退で日産復活なるか?
このところ、ネットニュースや経済系テレビ番組で日産のイヴァン・エスピノーサCEOの名前や顔写真を見る機会が増えた。
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日産といえば、昨年12月にホンダとの経営統合協議について記者会見したものの、それから2カ月後には経営統合協議を白紙撤回したことを覚えている人が少なくないだろう。
その過程で、当時の内田誠CEOは日産の事業全体を再検証する「ターンアラウンド」に取り組み、自動車事業の損益分岐点を250万台に引き下げ、大幅なコスト削減を目指すとしていた。
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そうした内田体制の試みを、さらに厳格化したのが4月1日付けでCEOに就任したエスピノーサ氏である。メキシコ出身で2001年にモンテレイ工科大学機械工学部を卒業し、メキシコ日産の商品企画担当や、タイ日産自動車のマーケティングディレクター、そして2010年代中盤から日産本社の上層部でグローバル商品戦略を取りまとめてきた。また、NISMOやモータースポーツ分野にも従事し、5月に東京E-Prixを初制覇した日産フォーミュラEチームを支援する立場であった。
その東京E-Prixで、エスピノーサCEOに筆者から直接声をかけた。その前日、一部報道で日産の主力工場である神奈川県追浜(おっぱま)工場や、日産車体の湘南工場の閉鎖に関するニュースが流れていたところだ。その上で、フォーミュラEの好調をきっかけに、企業としての厳しい局面を乗り越えてほしいと話した。
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また、別件のインタビューで、企業経営の立場では「ファイナンシャルなブレイン(志向)」とフォーミュラEの現場での「エモーショナルなブレイン」を使いわけているという回答があったので、その点についてもこちらから改めて指摘した。
短時間の会話であったが、がっしりと握手するエスピノーサ氏の目はとても「素直」だった。その後、エスピノーサ氏はテレビインタビューなどで、2026年度までに黒字化できなければ退任も覚悟すると、強いメッセージを放っている。
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日産はいま、世界的な自動車産業大変革期のなかで、次世代に向けて再出発できるかどうかの正念場にいる。そうした一大事を任されたエスピノーサ氏。むろん、彼ひとりがすべての決定を下すのではないが、いまの日産には極めて強い主導力と、短期間の状況変化に応じた柔軟性が経営トップに求められる。
エスピノーサ氏の「目」が今後、どのように変化するのだろうか。さまざまな機会に、日産幹部ら、そしてエスピノーサ氏の「人としての変化」を見守っていきたい。